劇団アルタイル – altair

劇団アルタイル – altair 公式サイトです。

ツキノ芸能プロダクション -ツキノプロ-

劇団アルタイル新企画として、ソロ楽曲制作がスタート!
19人の単独キャラクターソングを制作・配信することが決定しました!
楽曲制作はSACRA MUSICが全面プロデュース。キャラクターのイメージや心情に添いながら、
意外な一面も発見できるような珠玉の楽曲にご期待ください。

ソロ楽曲制作までの道のりは、アニメイトタイムズでのショートストーリー連載をご確認ください。
(それぞれのタイトルをクリックいただくとリンク先に移動します)

第1回 『仲間でありライバル』
第2回 『いつか、一番星に』
第3回 『笑顔のために』
第4回 『選ぶ道の先へ』
第5回 『始まりの日』
第6回 『新しい星』
第7回 『いつから、いつのまにか』
第8回 『勉強会にて』
第9回 『面接官は誰が?』
第10回 『続・面接官は誰が?』
第11回 『最終審査スタート!』
第12回 『スイート&ビター』
第13回 『未来への一歩』
第14回 『星とたんぽぽ』
第15回 『新メンバー決定!』
第16回 『次のステップへ』
第17回 『ストップ・アンド・ゴー』
第18回 『アンダンテ』
第19回 『公演のあとに』
第20回 『新企画、始動』
第21回 『じれったい熱』
第22回 『期待と、不安と』
第23回 『Going!!』
第24回 『くれないの想い』
第25回 『It’s my life』
第26回 『はじまりのうた』
第27回 『紙飛行機』
第28回 『ガラスの花』
第29回 『あの日の僕らへ』
第30回 『GUILTY』
第31回 『Shiny Stars』
第32回 『Wonderful Stage』
第33回 『Ride on』
第34回 『Beginning』
第35回 『Be With You』
第36回 『ラブ★デンジャラス』
第37回 『Move On Easy』
第38回 『ChildDays』
第39回 『Carry on』
第40回 『最終電車』
第41回 『運命のScramble』
第42回 『集合写真』

さらに、アニメイトタイムズで連載中のショートストーリーは、今後もソロ楽曲配信と連動!
各キャラクターや楽曲にフォーカスを当てて掘り下げる、より濃厚な物語を展開していきます。
キャラクター一人ひとりを深く知っていただくきっかけとして、ぜひ連載も一緒にチェックしてください!

“歌”と“物語”の両軸で広がっていく、劇団アルタイルの世界をお楽しみに!

■配信形態
ツキノ芸能プロダクション公式チャンネル(YouTube)にて配信
※配信は順序不同で行います。

■スケジュール
2017年10月下旬より順次配信予定
※配信スケジュールは変更になる場合があります。

■関連リンク
ツキノ芸能プロダクション公式チャンネル(YouTube)
劇団アルタイル公式Twitter
アニメイトタイムズ「ツキプロ」

劇団アルタイル『Episode 0』 



(来ちゃった……)
 現実感がないまま、リンタロウは小奇麗でファッショナブルなビルを見つめて仰のいた。
 ここに、ツキノ芸能プロダクションの支社が入っている。

 ――市ヶ谷リンタロウ様
 ――このたび弊社タレントオーディションに合格が決定いたしました

 そんな通知をリンタロウが受け取ったのは、夏休みもそろそろ終わるかという頃だった。
(俺、マネージャー志望だったんだけど……。
何故かタレントオーディションを受けることになって、しかも受かっちゃった……。
い、いいのかなあ、本当に)
 念のため事務所に問い合わせたけれど、結果は間違いでも手違いでもなかった。
 宛先を書き間違えたのか、はたまたリンタロウが見たオーディションまとめサイトに転記間違いがあったのか。
 ともかく彼は、厳しいオーディションを潜り抜けて、こうしてビルを見上げている。
 志望と違う内容ではあったが、そのまま話を受けることにしたのは、これも業界に関われる第一歩だと考えたからだ。
(だ、だから、ビビるな、リンタロウ!覚悟を決めて来たんだろ!だったら……)
 
「オイ、そこのちんちくりん。なに突っ立ってンだ」
「…………ん?」
 そのセリフが自分に向けたものだと気づくまで、たっぷり五秒くらいかかった。
(えっと……今のって俺に言われたんだよね?)
 改めて相手を見た。
 ちんちくりんと言われるほど、背丈に差はない。
 が、相手には、確かに一回り大きく見えるような、妙なオーラがあった。
(う、うわぁ……もしかしてこの人、アイドル……あ!)
 ツキプロ公式HPに掲載されている、所属タレント一覧で見た覚えがある顔だ。
「大崎イズモさん!」
「……なんだ、オマエ。出待ちかよ」
「えっ? あ、いえっ、ち、違いますっ!」
 慌てて首を横に振ると、彼――イズモは不審そうな面持ちで、リンタロウを頭のてっぺんからつま先までじろじろと眺めた。
「じゃあ、あれか。アイドルに憧れてド田舎から家出してきたとか、そういう系か」
「い、家出はしてないです」
「さっさと帰れ」
 いっそう険しい面持ちで言い放たれた、そのときだった。
「――あ。あのときの……」
 見覚えのある青年が立っていた。
(あ、この人、オーディション会場で話したことがある……)
 名前は、確か――。
「ええっと……辰巳マキさん!」
「ああ、よく覚えてるな。今日ここへ来たってことは……、おまえもオーディションに受かったのか」
「オーディションに受かった? オマエらが?」
 横合いから、イズモの声が飛んできた。
(そうだ、ちゃんと挨拶しなきゃ)
 特にイズモは、これから同じ事務所の先輩になる人だ。
「大崎さん!辰巳さん!市ヶ谷リンタロウです。今日づけで、ツキプロの劇団アルタイル所属になりました!
一生懸命頑張りますので、宜しくお願いします!」
 リンタロウは、イズモとマキに勢いよく頭を下げた。
 すると、マキは凛々しい顔をふっとゆるめて、笑った。
 意外に優しい人なのかもしれない。
「俺のことはマキでいい。オーディションで会ったのも、何かの縁かもな。改めてよろしく」
「はい!」
「げ、マジかよ」
 よろしくお願いします、と続けようとしたリンタロウより早く、イズモのうんざりした声が割って入った。
「……こんなヤツらが同期になんのかよ……」
「ってことは……もしかして大崎さんも?」
「大崎? オーディションにいたか?」
 マキの言葉に、イズモが不機嫌そうに目を細めた。
「あ、ええと、マキさん。大崎さんは、多分オーディション組じゃなくて――」
「あー……初っぱなから変なの引っかけちまった」
 イズモは低いボリュームでぼやいて、ふたりに背を向けた。
(どうしよう)
 困惑している間に、どんどん距離が開いていく。
(気を悪くしちゃったかな……でも、マキさんだって悪気があったわけじゃないし)
 どう言うのがよかったんだろう、と考えていると、隣でマキが小さくため息をついた。
「扱いが難しそうなヤツだな」
「しーっ! き、聞こえちゃいますよ!」
「オイコラ、そこのちんちくりん&ド素人!」
 ビルの入り口で、やおらイズモが仁王立ちで振り返った。
「なにグズグズしてんだ、おいてくぞ!」
「……え?」
「さっさと来いっつってんだよ! オマエらどーせ稽古場がどこかも知らねーだろーが! ったく……」
 イズモはイライラと言ったが、しかし、その場を動こうとしない。
「大崎さん、俺たちのこと待ってくれてる……?」
「……意外に、面倒見のいいヤツみたいだな?」
 お互い顔を見合わせて、つい、笑ってしまった。
(よかった)
 さっきまでの緊張がウソみたいに晴れて、リンタロウはもう一度、ビルを振り仰いだ。
(ちょっと予定とは違っちゃったけど……)
 この門戸をくぐりたかった。その気持ちに嘘はない。
「行きましょう」
 今日、この一歩から、とうとう始まる。
「――劇団アルタイルへ!」

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